魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 たまたまだと言ってしまえばそうだ。お母さんが遺してくれた大きな力があったこと、それは否めない。けれど……それがなくても、いつか私は変われたはずだって、そう信じる。

 だって、この世界は……こんなにも広く、たくさんの命と出会いで溢れているんだから。

「きっかけは……あなたたちの中にも、きっとあります。今苦しむたくさんの人たちの周りにも……」

 力いっぱい、黒い球体を抱き締めた。

 少しずつ、燻った灰が天に昇るように……呪いの力が王都を覆う青銀の壁へと吸い込まれ、消えてゆく。
 そして残ったのは、朧げなひとりの少女の姿。金色の髪と目をした、どこか……私の母にも似た面差しの。

『――――……あの時…………謝れなくて、ごめんね』

 少女の身体を抱き締めていると、囁くような声がした。
 誰に向けた言葉だったのか……今よりずっと昔の、最後の心残り。

 そうして――――核となっていた赤いピアスは砕け。
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