魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そりゃあめでたい! お幸せにね!」
「そういや、公爵様は北の戦でも大活躍って聞いてたなあ! そんな中、ここまですっ飛んできて俺たちの危機を救ってくれるとは、たいした英雄様の誕生だ! こりゃあいよいよ、帝国の未来も明るいぜ……! こうしちゃいられねぇ、王都をあげて祝福だ!」
「きゃあ、羨ましい! 私もボースウィン領に移り住んじゃおうかしら!」

 大半が、スレイバート様の美貌と、帝国の平和を守り抜いたことによる賞賛の声だった気がするけど……。さておき私たちへの祝福も十分に聞かれたところで、スレイバート様が悪戯心満載の顔つきをこちらに向け――そして。

「んっ――――!?」
「――――へへっ」

 愛情たっぷりのキスが口を塞ぐ。

「もう一生離さねーからな」
「――――もう!」

 大衆の面前で大胆な行動を見せた彼は、ご満悦の顔で私を下に降ろすと、民衆に大手を振ってみせた。私も心臓を忙しなく弾ませながらも、それでも、皆の声援が嬉しくて、自然と嬉しい気持ちが顔に表れてくる。
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