魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

(エピローグ)

「――――本当に、このご恩はどうお返ししたらいいのか……」
「僕たちがこうして無事に結ばれるのも、シルウィー様のおかげです」
「いえいえ……私はできることをしただけで」

 お礼というのは言われて嬉しい部分もあるのだけれど、やはり何度受けても恐縮してしまう。
 自然に受け取れるように格好いい大人になるには、後どのくらい人生経験を積み重ねたらいいのやら――。

 ここは王都にある、こじんまりとした一軒家の前で……目の前にいるこのふたりは将来を誓い合った恋人同士。
 アリシアさんとリカルドさんという名前だ。

 さて、彼らとはつい最近知り合ったばかりだが、どうしてこのようなやり取りが繰り広げられているのかというと――。
 実はこの恋人たちを巡るひとつの事件に私が関わることになったからで……。

 つまるところ、強引に金と権力でアリシアさんの身柄を手に入れようとした貴族をやり込めてやったのだ。

 といっても、そこまでひどいことはしていない。王都でリカルドさんの商店に難癖を付け、取り巻きと一緒に暴れて彼を殴ろうとした貴族の息子を、取り押さえて警備兵に突き出した……そのくらい。
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