魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そしてなんと……新たに刷新された組織を率いていく指導者として、今やボースウィン領夜明けの聖女として名高い、テレサの名が挙がったのである。
 恥ずかしながら、今回の事件の功労者である私の名を推す声もあったのだが、それは辞退させていただいた。私は私で大きな約束と、やりたいことがあったので。
 当のテレサ本人はというと……。

「ボースウィン領が持ち直した今、私の役割も大きく減りましたし……。この地出身の私が都で華々しい活躍を送れば、領民たちにまた違った希望を与えることにもなるでしょう。そのお役目、謹んでお受けすることにいたします」

 案外すんなりとその指名を受け入れることとなった。彼女の郷土愛は変わらないけれど、兄であるスレイバート様の活躍にも触発されて、より広い場所に目を向けたいという想いに駆られたのかもしれない。

 ちなみに、あれからも共和国――帝国間の和平の立役者となったルシドとは頻繁に手紙を送り合っているらしく……。他人には見せられないような内容のものもあるようで、ふたりの仲が縮まっていきつつあることに、私は密かな期待を抱いている。その辺り、スレイバート様はとしては、どうなのやら。

 そんなことを考えるうちに、馬車は次の目的地へと到着した。
 王都の片隅にある、静かな一区画。
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