魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……行こうぜ」
「ええ」

 馬車を降り、スレイバート様から一抱えもある花束を受け取った私は、その厳かな場所に足を踏み入れていく。

 少し湿った土を踏み、いくつもの苔むした石塊が立ち並ぶ脇道を進むと、自然と心の動揺は鎮まってくる。まるで、別世界に近い、あの聖域を訪れた時のように……。

 ここは墓所だ。帝国のために大きな役割を果たした偉人たちの魂を慰めるための――。

「ここだよ」

 スレイバート様の後ろに並んでいた私が、その声にハッとする。
 そして、比較的新しい、黒い墓石の表面に刻まれた名前を、じっくりと目に留める。

【マルグリット・ハクスリンゲン 帝興暦1582~1602 永き帝国史の中で最も国と民を援け、国家の守護と発展に身命を尽くした偉大なる魔法士に敬意を表し、大賢者号を授く。どうか、安らかに眠り給え】
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