魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 なら、起こした変化がほんのわずかなものでも、きっとそれは、誰かを介して延々と広がってゆく。そうした波は、いつだって正しく伝わるとは限らないのかもしれない。でも、その中心になにかをよくしたい、そんな気持ちがあったなら……それは皆を、願う方向へと導いてくれるんじゃないかと思うから。

「私たちも世界の一部。それなら、きっと、世界を変えていくことも難しいことじゃないはずだよね……」

 きっと、お母さんはそのことを分かってたんじゃないかなと思う。使命のためだけじゃなく……聖域や、メレーナさんのもとで、誰かが大切にしてくれることの幸せを知ることができたから、あんなにも力を惜しまず多くの人と関わることができたのだろう。

 いくらなりたくても、同じ人間には絶対になれない……。でも、私は私でいいと、いつか胸を張って言えるように……この自分という存在を大事に育ててゆこう。かけがえのない、一粒の種のように。

 しばらく目を閉じていた私は、開くと足元を見た。そして、そこに並ぶいくつかの供え物の中に、同じ種類の赤い花が、いくつも置かれているのに気付く。それがなんとなく気にかかった。

(これって……)

 私はスレイバート様から聞いて知ったのだが……他にも生前の母の好みを知っている人がいたのだろうか。こんな頻繁に訪れるくらいに、仲のいい人が……。
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