魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そういえば、お墓も定期的に何度も訪れた様子があり、他のものと比べて綺麗にされている。

 ――――ジリッ。

(…………ぇっ)

 ほんの微かに、背後で湿った土を擦る音を聞きつけ、私は反射的に振り向くと飛び出していた。

 なにかの直感が働いたのだとしか思えなかった。
 木立から人影が遠ざかっていくのが見えて……私はドレスが汚れるのも構わずにそれを追った。走るのはあんまり得意じゃない……けれど。

(逃がす……もんか!)

 魔法で身体の力をわずかに上げて、私はその後ろ姿にぶつかっていった。焦げ茶色の頭をしている、見知った男性の背中に――。

「――お父様!」
「――――くっ」

 どさりと横倒しになって――私はずっと探していた父――元ハクスリンゲン家当主ゴディアと、地面の上で転がった。
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