魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「は、離せ! 離して……くれ!」
「離しません!」
「いきなり飛び出したからなにかと思えば、あんたか……!」

 こちらの突飛な行動に肝を冷やしたスレイバート様が追って来て、苦々しい表情で父を見下ろす。

「……マルグリットの墓参りだけはしてたってわけかよ。娘の結婚式には顔を見せやがらなかったくせに……」

 スレイバート様が背面に回り込むと、どうにかして私の拘束から脱出しようとしていた父は、諦めたように項垂れた。

 父ゴディアは……結局あの王都での事件の後、いつの間にか姿を晦ましてしまっていた。クラウスさんに捜索を頼もうかとは思ったが、結婚式も間近に迫ってとんでもなく忙しそうな彼に無理強いはできず、その日は訪れ、私はメレーナさんに両親の代役を頼んだのだ。

 その後、王都の酒場で情報通の人物に話を聞いたりもしたが行方は知れず、すでにこの街を離れたのではないかと思っていたのに……。

 もう逃げだす意志はなさそうで……私は馬乗りになっていた彼の身体からどくと、息を落ち着けて父に尋ねかける。
< 1,169 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop