魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……今は、どんな暮らしを?」
「……お前には関係のないことだ」

 恐れたように目を逸らし、言葉少なに拒絶する彼を、スレイバート様が怒鳴りつける。

「てめえ、いい加減にしろよ! 呪いに掛かってたって話は聞いた……。でもな、あんたが娘に対してしたことは、消えるわけじゃねえ! せめて、真面目に向き合うくらいのことはしてやったらどうなんだよ!」
「スレイバート様……待って」

 こちらの気持ちを汲んで、怒りをぶつけようとした彼を宥めつつも、私は、父に尋ねかけた。

「……お母さんのこと。こんな状態でも気に掛けるくらい、好きだったんですよね?」
「…………」

 父はなにも答えない。でも……その姿を見れば分かる。

 貴族であった頃からすれば考えられないくらいにぼろぼろの、汚れた姿。シャツはところどころ赤黒い染みで汚れ、ズボンは裾が破けて靴下すら履いていない。
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