魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 父の目が見開かれ、その頬に真っ赤な手のひらの跡が浮かぶ。彼の顔は、その後……のろのろと正面に戻り、そのふたつの目が弱々しく、まさかという表情で私を捉えた。

「やっとちゃんと、こちらを見てくれましたね」

 実家にいた頃と逆だ。あの時は……私の方が父と目を合わせるのが嫌で、ずっと瞳を逸らしていたから。

 でも、今なら言いたいことが言える気がする。ちゃんとした、喧嘩ができる。

「私はあなたの……お父様のことが大っ嫌いでした! 小さい頃からお金のことばっかりで、私に声を掛ける時は決まって理不尽に叱る時ばっかり! あなたのおかげで、私は毎日魔法のことを覚える機械みたいになった気持ちで過ごしてた! 痛くて苦しくて、心が寒かった! どうして生きてるのか分からないのに、誰も教えてくれない!」

 これは、幼かった頃の私の叫びだ……胸に溜め込んだ想いを、この際全部吐き出す。

「私が、周りの冷たい人たちの話を、どんな気持ちで聞いていたかわかりますか!? はぁっ……私だって、私だってっ、同い年の子どもたちと話したり遊んだり、友達だって作りたかった。つまらない勉強ばっかりじゃなく、お芝居とかを見に行ったり、お買い物に行ったり、美味しいものを食べたり、楽しいことに触れてみたかった。親に……あなたたちに抱き締めて、愛してるって言ってもらいたかった! そんな私の気持ち、分からないでしょう!?」
「…………」
< 1,172 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop