魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 父は、また項垂れようとしたが、それを許さずに、私は両手で肩を掴んで揺する。

「実家を出てからも、ずっと悩んでました……。あの家であった出来事を忘れて、新しい生活を始められれば、全部なかったことにできるのかなって。でも、そんなわけありませんよね……。あの時もまた、私の人生の一部だったんだから……」

 だんだんと、溢れる悔しさに……涙が滲み出る。私は今、子供時代の自分のために怒っている。目の前の、こんなに弱くなった、無抵抗な父に対して。

「いくら憎まれても仕方がない……。殴られようと、殺されようと、文句は言えん。済まなかった、この通りだ」
「――やめてください! 私は……」

 処刑を望む罪人のように、父は掠れた小さな声を漏らすと、首を伸ばして地面に額を擦り付けようとした。それを慌てて押し止めながら……私の心の中で違う、そうじゃないという否定の感情が渦巻く。私が求めているのは、そういう繰り言でも、謝罪でもなくて――。

「……親子同士のことに、俺が口を出すのは違うかも知れねーが……」

 どう言えば伝わるのか――両手の拳を握りしめたまま顰め面で父の頭を睨む私の肩に、スレイバート様の手が置かれる。
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