魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「あんたの娘は、こんなにも立派に育ったぞ。マルグリットみたいにたくさんの人を救って……結婚してさ、これからもっと幸せになるんだ。そんな娘に向けて……父親としてあんたが言ってやれることは、ないのかよ?」

 彼は責めるでもなく慰めるでもなく、静かな口調でそう問いかけた。

「…………私、は」

 枯れ葉を潰すかのように擦れた父の声が、微かに漏れた。

 あんなに頑なで、逆らいようもなかった背中が、今はとても小さく見える。
 あの家にいる父は、私の目には悪魔みたいに映っていた。
 私を傷付け、突き放すだけの……他人よりも遥かに遠くて、恐ろしい存在。
 でも、こんなにも……。

 すっかり老いたかのように弱々しくなった父の顔がゆっくりと上がり、くしゃりと歪んで私を見つめた。

「愚かで、こうして生きている価値もないような、そんな人間だ。でも、どうか……許してもらえないだろうか。呪いで命を失おうとする妻を、見送ることしかできなかったこと。そして、彼女との約束を破り……お前を守るどころか虐げて、不幸な思いをさせてしまったこと。そして……」
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