魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「聞けば他の領地でも、同じように大きな瘴気の被害が出ている場所はあります。それならば、スレイバート様の呪いがこの領地に瘴気の被害をもたらしているんじゃなく、逆も考えられないでしょうか」
「瘴気が強まることで、スレイバート様にかけられた呪いもよりひどいものになろうとしているってこと?」
「はい、だとしたら……。最近よく聞くんです。呪われた公爵様のせいで、この領地に災いが広がっているって。分かりますよ、誰かに不満をぶつけなければやっていられないのは。でもそんなの口惜しすぎる……本来なら、あんなことにならなければ、スレイバート様はきっとお父上を凌ぐ英雄になられたはずなのに……」

 無責任な噂がこれ以上広がって欲しくないと、ルシドは拳を握り締めた。彼は以前からスレイバート様のことを恩人だと慕う様子を見せていたし、そんな人が悪しざまに貶されているのが我慢ならないのだろう。

「私たちが瘴気を取り除くことで……スレイバート様の呪いが少しでも改善したらいいのだけど……。あ、そうだ! 彼に呪いをかけたのは、一体何者なの?」

 当たり前の疑問をこれまで見落としてしまっていた私に、テレサは難しい顔で告げる。

「それが……分からないんです。以前、兄の容態を見に一度だけ、王都から精霊教会の高位の司祭様が来てくださったのですが……。その方でもあの呪いをかけた人物の正体を暴けず、わずかに和らげることすらできませんでした」
「そんな……」
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