魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私の言葉を前に、ルシドは険しい顔で何度も手のひらを握っては開き、じっと眺める――。

 しかし決意をすぐに固めると、顔をバッと上げ私たちに頭を下げた。

「――申し訳ありません。おふたりのことは僕が命に代えても守ります。ですからどうか、このまま行かせてください」
「テレサ……あなたは」

 御者と一緒にここで降りて、他所に助けを呼びに行ってもらうことも考えたが、彼女は大きく首を振った。

「……いえ、あれほどの数の魔物と戦っているのです。きっと怪我人もたくさん出ているはず……。私も行きます。治癒魔法や防御魔法で手助けして、少しでも皆が生き残る確率を上げなくては」

 いいのね、と私が目配せすると、彼女はこちらの手を握り微笑みかけてくれた。手の震えから恐れは十分に伝わり、こんな提案をしたことを申し訳なく思う。

「こんなに若い娘さん方が、怖いのを我慢してるんだ。プロの御者として私が逃げちまうわけにゃ参りませんな! 車の運転は任せてください!」
「ありがとう。それじゃ、このまま正門に向かって走り込んでください! 道は、僕が開きます!」
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