魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 幸い御者さんも馬車を放りだしたりせず付き合ってくれるようで、ルシドの掛け声に合わせて猛然と馬を走らせ、街道の景色が恐ろしい速度で過ぎ去っていく。

 そんな状態でも彼は意識を乱すことなく、身体から溢れ出す萌黄色の魔力を右手へと集中させてゆく。そして、魔物達が眼前に迫ったその時、手を突き出して魔力を一気に解放した。

「ハァァァァッ!」

 威勢のいいかけ声とともに、凄まじい魔力の旋風が吹き荒れる。それは門前に密集した魔物達へ向かって突き進み、地を這う巨大な大蛇のように相当数の魔物たちを呑み込んで、薙ぎ払った。余波がこちらにも吹き付けて髪を乱し、私はテレサと強く抱き合う。

「今だ、突っ込んでくれ! 皆、済まないが僕たちを街に入れてくれっ!」
「あっ、あれはボースウィン城の方々!? 助けに来てくださったんだ!」

 大きく切り開かれた道へ、速度を上げた馬車が大きく滑り込み――街の中へ。

 喜びの声を上げる街人や兵士たち。急停止した馬車から飛び降りると、ルシドは大声で彼らに、「誰か、今の街の状況を教えてくれ!」と呼びかけた。
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