魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ごめんなさい……瘴気を、吸いすぎたみたい。ふらふらして、ちょっと進むのに時間がかかっちゃう、かも」
「でしたら――」

 すっと日に焼けた色合いの手がこちらに差し出された。

「よかったら、僕の手を支えにしてください」
「え、でも……」
「ここで倒れられたりしたら困りますから。柱かなにかだと思ってもらって構いませんよ」

 確かに……せっかく魔物の襲撃から生き残ったのに、途中で倒れて怪我でもしたら間抜けすぎる。彼はずっと真面目な瞳でこちらを見つめており、遠慮するだけ迷惑になってしまうなと私は判断した。

「ありがとう。本当に申し訳ないけど、今だけは頼らせてもらうわ」
「いいえ、気軽に使ってもらった方が僕も嬉しいですから」

 彼は爽やかな笑みを見せ、寄りかかるようにした私の肘を下から支えてくれる。本当に彼は素直で思い遣りのある好青年で、その実直さは育ちの良さを感じさせる。
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