魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ゆっくりでいいですからね」
「うん……」

 私のペースに合わせて引いてくれるその手につい安心して、途中で寝こけそうになった私は、「いけないいけない」と眠気覚ましに、起きた事件の話の続きをせがんだ。

「ねえ……こういうことがこの辺りではよくあるの?」

 平和な王都と違って、厳しい辺境の地ではこれが日常なのか――そんな私の想像を、彼はすぐさま否定する。

「いいえ。いくら魔物の発生が多い土地だといっても、今回みたいなのは稀です。僕がこの地に来てからの十数年でも、こんなことは一度もありませんでした」
「だとしたら、原因はなんなのかしら」
「……それはわかりません。でも、ここだけじゃないんです。最近ボースウィン領ではこういった原因不明の突発的な災害が多発していて。皆も警戒してます……まるで、意図的に誰かがこの地を――。いえ……すみません」

 これ以上私を不安にさせまいという配慮か、ルシドは険しい顔になるのを途中で止めた。
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