魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なんだその反抗的な目は! いや、その姿も声もお前のなにもかもが気に障る。中途半端に母の真似をして生まれおって! お前のせいでわしが今までどれだけ無駄金を遣わされたことか……そのあげくがこれとはな!」

 父は机を拳で何度も叩き、口からはその後も罵倒の嵐が続いた。

 私の魔力が目減りしていく中毎日繰り返されたハクスリンゲン家の恒例行事。それは幼かった私の心をやすりで削るみたいにぼろぼろにして、今ではどんなことを言われても心の表面を上滑りするばかり。
 いつもなら、速やかにこれを終わらすには、ただただ心を無にして父が息を切らすのを待つのが一番。

 だけれど……今回限りはおそらくこれだけでは終わらない、そんな予感がする。

「ふん! その取り澄ましたような顔も気に食わんが、まあいい。お前とももう会うことはないからな。これらがなにか分かるか?」

 父はいやらしい笑みを浮かべると、机の上にうずたかく積まれた書類の束をばっと広げた。
 そして私がなにも答えないのを見ると、さも気分がよさそうに大笑いする。
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