魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
しばらくの間、私達は互いを無言で見つめ合った。
ベッドの椅子に座るとずいぶん彼と距離が近くなったけれど、それでも……まだ遠いと、感じてしまう。彼の手に指で触れてみても、まるで氷のように冷たくてとても安心できない。
「ちっ……辛気臭え顔してんなよ。ここに来たばっかの頃みたいじゃねーか」
「すみ、ません……」
そう言われて笑おうとした。けれど、考えてみれば私は今まで笑おうとして笑ったことなんて、数えるほどしかない。ここに来てから心から笑えていたのも、楽しいことをや嬉しいことを皆が経験させてくれていたからで……。
(あ、あれっ……どんな感じだったかしら……)
よかったことを思い出しても、やっぱり笑えない。私を受け入れてくれた新しい輪の中心となっていた、とても大切な人の姿が欠けようとしているのに……どうして明るい顔を見せてあげられるというのだろう。
どうも上手くいかず、私は顔を俯かせしかなかった。
すると、ぽたりと、冷たい雫が膝の上で握った手の甲に弾ける。
ベッドの椅子に座るとずいぶん彼と距離が近くなったけれど、それでも……まだ遠いと、感じてしまう。彼の手に指で触れてみても、まるで氷のように冷たくてとても安心できない。
「ちっ……辛気臭え顔してんなよ。ここに来たばっかの頃みたいじゃねーか」
「すみ、ません……」
そう言われて笑おうとした。けれど、考えてみれば私は今まで笑おうとして笑ったことなんて、数えるほどしかない。ここに来てから心から笑えていたのも、楽しいことをや嬉しいことを皆が経験させてくれていたからで……。
(あ、あれっ……どんな感じだったかしら……)
よかったことを思い出しても、やっぱり笑えない。私を受け入れてくれた新しい輪の中心となっていた、とても大切な人の姿が欠けようとしているのに……どうして明るい顔を見せてあげられるというのだろう。
どうも上手くいかず、私は顔を俯かせしかなかった。
すると、ぽたりと、冷たい雫が膝の上で握った手の甲に弾ける。