魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「なあ、シルウィー」

 スレイバート様の大きな手のひらがゆっくりと伸び、私の指に、力なく触れた。
 彼は、ぽつりと言う。

「やっぱり止めとくか、結婚なんて」
「……え?」

 私は顔を跳ね上げて聞き返す。

 冗談であることを確認しようとした。私を笑顔にさせるために、突拍子もないことを言い出した彼が口元を笑わせている。そんな姿を期待した、のに――。

「もうちょっとだけ、お前が頑張ってくれたらさ。ボースウィン領のやつらも瘴気の被害から解放されると思う。そうすりゃ、公爵家の力なんざなくても、ここのやつらは自分たちの暮らしをなんとか守っていける気がするんだ……」

 柔らかくも真剣な表情は、冗談の匂いを欠片も感じさせてはくれない。

「で……でも、そんなの……。その後は私、どうしたら――」
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