魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうしてゆけというのか――。
 ずっと目を逸らそうとしていた事実が、私に自分の甘さを嫌という程思い知らせる。

 今までが、上手くいきすぎていただけなのだ。そして、スレイバート様は何もかもが分かっていながら……なんにも分かろうとしない私を優しく見守ってくれていた。無理に関係を強要したりせず、私の心がちゃんとそのことに向き合うまでの時間を作ってくれていたのだ。

 それに気付いて……私は自分がどれだけ傲慢だったのかを、思い知った。

「わ、私……どうして。あ……あぁ」

 息が苦しく、胸が痛い……。でも、そんなことどうでも良くなるくらいに心が悲鳴を上げる。それすら……きっと今までこの人が与えられてきた苦痛の何十分の一にも満たないのだと、私はどうにかなりそうになる。

「いいんだ」

 でも……気付いたら、起き上がった彼がそっと身体を抱きしめてくれて。
 おかしくなりそうな私の心を現実へと繋ぎ留めてくれる。
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