魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「もう……やめてください。そんな話、聞きたくない。私は…………ずっと、ここであなたたちと……暮らせていけたらって」

 いいよって、許してもらえたら。
 いつまでも側で私のことをからかって、気が向いた時だけ構ってくれる、そんなのでいいから……嘘でもいいからダンスの時みたいに約束をして欲しかった。

 でもスレイバート様は、なにも言わずに困った顔で首を振るだけで。

 彼の中で、何かが限界を越えてしまった――その表情からはそう悟らざるを得なくて、私の身体から力が抜けてゆく。

「寂しくなるな……」

 まるでもう……どこかに旅立つ準備ができているかのように冷えた、彼の素肌。
 それにこうして抱きしめられていると、時間が停まってしまったかのような気分になる。

 けれど、こうしている今も、触れた胸元から伝わるその鼓動が、着実に彼の残り時間を削り取っていて……。

(どうして、私はこんなにもなにもできないんだろう……)
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