魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 せいいっぱいの謝罪を顔に浮かべてみせたが、表情を動かすのが苦手な私のこと、それも父には伝わらなかったようだ。

「チッ、涙のひとつも見せぬとはふてぶてしい! さっさと消えろ!」

 盛大な舌打ちの後、机を蹴る音を合図として、私は部屋から追い払われた。扉を閉めた後も室内からは手当たり次第にものを壊す音が鳴っている。

 物心ついて魔法の修業を始めるまでは、もう少しましだった気もするけれど。もうそんなことを思い出すのも疲れてしまった。せめて私に問題があった時点で王家に報告していたら、この家を父の代で潰すようなことにはならなかっただろうに。私だって何度か忠告しようとしたけれど、その度に父はひどく怒り、耳を貸してなんかくれなかった。

 どうしようもなかったんだ――そんなことを考えながら部屋に戻ると、驚いたことに自室は荒らされていた。着替え用の服からわずかに残っていた母の遺品のアクセサリまで奪われ、持ち出せなかったベッドのマットレスまでズタズタに切り裂かれている。きっと、辞めさせられた使用人が腹いせにやっていったんだろう。

「……ごめんね。直してあげることも出来ないよ」

 私はそっとその中にある、額縁が奪われて中身だけが放り出された母の肖像画――顔の上が斜めに切り裂かれてしまっている――を撫でて力なく微笑む。
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