魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「っぷ! お前……いったい何をしやがった! 無事なのか、おい!」

 と、同時……ふらりと身体を後ろに倒した私をスレイバート様が支えると、怒りとも憂いともつかない表情を浮かべながら揺する。

 もう私はその時には息も絶え絶えで、意識を保てないほどに疲れ切っていたけれど……それでも、かろうじて震える指先を、壁際の一点に伸ばした。

「…………鏡を」
「…………?」

 私が指差した室内の壁掛け鏡に、呆然と目をやった彼の表情が少しずつ変化していく。こちらを訝し気に見つめていた、その瞳が……驚きに見開かれ、そして彼は――。

「そ……んなっ!」

 私の背中をそっとベッドに落ち着けると、彼はふらりと立ち上がり、顔を両手で挟んだまま、ゆっくりと鏡に近づいていく。
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