魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 こんこんと目の前で眠るこの可愛らしい娘とはとは似ても似つかないが、とにかくその女――マルグリット・ハクスリンゲンは突然やってきて、俺のそれまでをぶち壊した。

 帝国軍に所属していた彼女は北側の国境に接する敵国ベルージ王国に対する援軍としてこちらに寄こされ、親父と連携し敵軍に予想以上の打撃を与えて敗退させた。

 そしてその後もしばらくボースウィン城に留まると、強力な魔物たちの被害に苦しむ領地を救い、その復興に寄与する傍ら、たまにだが魔法の師として俺の面倒も見てくれていたのだ。

「……やっぱ似てねーや」

 亡くなった今も、彼女の姿は鮮烈な印象を俺の中に残している。
 背も女性としては高く、美人ではっきりした顔立ちの女だった。どうしてもまだどこかに幼さの残るシルウィーの姿とはほとんど重ならない。

 ともあれ、親父以上の腕前を持つ魔法士を見たのは初めてで、火でも水でもいかなるものも魔法で操って見せる彼女の姿は、俺の憧れでもあった。あの頃のちゃちい俺の魔法などお話にならないような、一片の無駄なく洗練された魔力の扱いに、俺はただ圧倒され、これぞ目指すべき魔法士の高みなのだと、胸を高鳴らせた。
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