魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『ごめんなさいお兄様、私、何もできなくて……』
『お前のせいじゃない。俺が弱かっただけだ』

 必死に俺を治そうとしては失敗する妹を慰めることしかできない己の無力を嘆き、擦り減っていく命を実感する毎日。
 そしていよいよ――死が目前に迫り、この地を守る責任と残していく者達のために何をすればいいのか……重たい決断に押し潰されそうになっていた時、その報せは来た。

『下記の条件でならば婚約を受け入れ、娘を直ちに送る……?』

 それは一通の手紙。信じられないことに、それは以前忘れるほど前に送った、婚約申し込みへの返答だった。多少条件を吹っ掛けられてはいたが、俺は直ちに支度金を準備して王都に送ると、出立の報せが届くのを待った。

 ――ハクスリンゲン家のひとり娘シルウィー。

 あのマルグリットを血を継ぐ彼女ならば、わずかにしろ呪いを和らげる方法を見つけてくれるかもしれない。
 それができなければ、せめて俺の子どもを産んでもらい、次代に望みを託す。そうしなければ、行き場がなくなったこの呪いは、多くの人を巻き込んでこの地を破滅させる。もう一刻も早くそれを回避することしか考えられず、俺は居ても経ってもいられずにシルウィーを迎えに行った。
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