魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そして……出会ったんだ。自分だって命が危ねえのに、他の奴らを先に逃して最後まで足掻こうとしていた、バカなこいつと。

「あの時ゃがっかりしたんだがな……」

 あの程度の魔物すら追い払えない、魔法士ですらない無力な女。それでも、放ってはおけずに助けに入った。

 だが……こいつは見も知らずの俺を見捨てずに命懸けで庇ってくれるようなやつで、おかげで俺は偶然命を取り留めた。そしてそれからも、その人の好さをいいことに、俺はこいつに責任の尻拭いを押し付けようとしたんだ。

 こいつが俺たちのために動こうとしてくれる姿を見て、代わりに出来る限りのことはしてやりたいと思ったのは本心だ。だけど……その時にはもう遅かった。

 身体の限界はすでに訪れていて、倒れた俺は自分の死期を悟った。
 親父との誓いも、こいつとした約束も、なにひとつ守れない自分が恥ずかしく……そんな俺がこれ以上、こいつを利用することは許されないとも思った。だから、婚約の解消を切り出した。

 なのに、こいつは……ここから離れることを拒み、死にゆく俺の望みを叶えようとまでしてくれたんだ。憎んで当然の、こんな男の望みを……。
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