魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 覗き込んでくるテレサに向けて私が指差したのは、丁度ボースウィン領の中心辺りにある、サンクリィという村。
実は、ラッフェンハイム帝国の北部にあるボースウィン城は、領地の真ん中ではなくやや王都寄り――南側に位置している。そしてそこからやや北に向かうのが、私が今住んでいるレーフェルの街。さらに少し北に進むと先程名前の出たサンクリィ村に行きつく。

 それを越えると私の知らない地名ばかりで、さらにさらに……北側にある帝国の国境線までを越えてしまえば、そこからはすぐにセルベリア共和国、ベルージ王国という他国へと隣接している。

 さすがに国境付近まで向かうとなると――未だ婚約者という身分のままで、スレイバート様の許可なくというわけにはいかない。当分はこのレーフェルからあまり離れずに活動することになりそうだ。

 そうそう……そこで、肝心の今私が行っている仕事がどのようなものかというと……。

「――おはようございます……!」
「もう、遅いわよ。ルシド」
「も、申し訳ありません、テレサ様」

 やや焦り気味の様子で、店の扉を開けて顔を出した青年がぴしゃりとテレサに叱られ頭を下げた。ボースウィン城に勤める若き騎士ルシド……それと他にも数名の騎士たちが店内に入り込み、挨拶しながら抱えていた木箱を置いていく。
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