魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ひとりでいる時と、見える景色が全然違ってきた気がして、前に踏み出す活力がどんどん湧いてきた。

「よおし、早く村長さんの息子さんを見つけてあげて、レーフェルに戻ったら、今度の休みに皆を誘ってお出かけしましょう!」
「おっと、張り切りすぎは禁物ですよ」

 腕を引っ張るように前に出た私にルシドも歩調を合わせ、私たちは笑顔で林の中を突き進んだ。
 ――そしてやがて、私達の瞳に眩しい鏡のようなきらめきが届き始める。

「あっ! あれかしら……?」
「着いたみたいですね」

 湖――透明な氷で覆われた円弧が、降り注いでくる太陽の光を、きらきらと辺りに振り撒いている。ここまでくれば平坦な道ばかりだとルシドは手を離してくれ、私は遠慮なくその淵に駆け寄った。転々と雪に残る足跡の先で、膝をついた私は湖を覗き込む。

「わあ……綺麗」

 大分薄くなった透明な氷の奥には、小さな魚たちが優雅に泳いでいる。ライトブルーの鱗を貼り付けた肢体がすいすいと目の前を横切ってゆく様を見ていた間に、氷についた手はじんじんとかじかんでいた。隣に膝をついていたルシドが指を差した。
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