魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私たちはそんな彼の様子に顔を見合わせると、刺激しないようにゆっくりと近づいていったのだが……。

「大丈夫よ~! 私達……あなたをお母さんに迎えに行くよう言われてきたの~」
「えっ、お母さんが?」

 少年の警戒が緩み、真上に顔をあげて太陽の位置を確認し、目を丸くした――その時だった。

「――――っ!」
「シルウィー様!?」

 気付けば私の足は地面を蹴って駆けだしていた。彼の身体がぐらりと後ろへ傾いたのが見えたのだ。

「わ、わぁぁぁぁ……助けて」

 ずずずと、耳が小刻みな振動を捉える。
 固まっていたように思えていた足場の雪が、少年の動きに耐え切れず、ぐずぐずと崩れてゆく。彼は懸命に手足を動かそうとするも、それは雪を掴むばかりで――。
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