魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「飛行の魔法は魔力の消費が大きくて。崖から安全に降りるために消費してしまった分を考えると、残り魔力が心許ないんです。確実に上に戻るためには、回復を待たなければ」

 無理をして、また再び自由落下するなんてことになったら目も当てられない。
 そのため、周囲を散策して元の場所に戻る道を探してみたそうなのだが、迂回路も中々に険しいようで、日が暮れた後で子どもと女性を連れて進むのはかえって危険だと判断したようだ。

 なので大人しくここで一夜を過ごし、魔力の回復を待つのが最善だと、彼はすまなそうに報告してくれた。

「ご不便をおかけしますが、翌朝すぐに回復した魔力で崖上に上がり、少年と共に村へ送り届けます。ですので、なにとぞご辛抱を」
「分かったわ。ありがとう……色々気遣ってくれて」

 内部は少し肌寒さはあるものの、焚火のお蔭で凍えるほどではない。一晩くらいなら十分に凌げる。方針がちゃんと決まってほっとしていると、隣の少年がそわそわしながら、視線を私の手元に注いでいるのに気が付いた。

「あっ、ごめんね。借りたままだったわ」

 私が手の平の中に閉じ込めていたペンダントを少年に差し出すと、ルシドがそれを見て首を傾げた。
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