魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「降参です……では、夜が明けるまで壁にでもなったつもりでいますね」
「壁にしては、ちょっと律儀で優しすぎるわ」

 恥ずかしさはあったけど、くっついていると互いの体温で温かくなり、安心してくる。

 焚火の炎はゆらゆらと優しく揺れ、真上に空けた煙突がわりの穴から、微かに星空が覗ける。
 それを眺めながら、時折くしゃみをする少年を抱えた私たちは、遅くまでこれまでの人生や悩みなどについて語り合う……きっとこの先の糧となる貴重な時間を共有した。

 そして翌日……。

「お姉ちゃーん、お兄ちゃーん! ぜったいだよ! またぜったい、村に遊びに来てねー!」

 少年が大きな声と共に振る両手に、こちらも同じようにして返す。

 一晩が明け、私たちはルシドの魔法によって再び元の崖上に昇り、無事サンクリィの村へと帰り着くことができた。村でもどうやら、私たちが帰ってこないことで大騒ぎになり、朝を待って捜索することになっていたらしく、皆が動き出す前に帰れて本当によかった。
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