魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(その場にいなくてよかった……)

 それに、その話を聞いてテレサは一瞬ぞっとした。自分にはおそらくそんなことは無理だと思ったからだ。躊躇いなく自分の命を他人のために投げ捨てる。それはどこか……領地のことだけを考えて命を擦り減らしていた、在りし日の兄の姿を思い出す。どこで彼女は、そんな人格を抱えることになったのだろう。

(似た者同士、なのかも……だからこそ)

 やはり彼女にはいつでも側にいてその気持ちを理解し、行動に目を光らせてくれる人間が必要だ。

 そして多分兄ならば、きっと今回もやすやすとシルウィーの無茶を抑えつつ、子供を助けて当日中にレーフェルまで帰り着くことができていたと、身内贔屓ながらもテレサはそう思っている。

 そしてそれは幼い頃から彼を目標にしてきたルシドも分かっていて、だからこそ自らの不明としてこんなにも恥じ入っているのだろう。
 
 ……結局、あのふたりはお互いがくっつくのが一番なのに――どうしてこう上手くいかないのか。

「はぁ……落ち込んでばかりいても仕方がないわ。言い方は厳しいものだったにしろ、目の前で大切な人を守れなかった時に傷付くのは自分自身だもの。私たちも忸怩(じくじ)たる思いがあるなら精進するしかないのでしょうね」
「……ええ、分かっています」
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