魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「うっ……逃げ、なきゃ」

しかし私は、それでも立ち上がってなんとか動こうとする。どうしてこんなに、死にたくないのだろう。

「はあ、はあ……」

 痛いのも怖いのも、苦しいのも嫌だから……だけど、それだけじゃなくて。
 多分私は、こんな目に遭っていても、まだ未来に救いみたいなものがあると期待したいんだと思った。

 せっかくこうして生まれてきて、なにかひとつだけでも死ぬ前に……生きてきてよかった――心からそう思えるような出来事があってほしかった。

(寂しいよ、こんなの……)

 私はなんとか木の幹によりかかり身体を起こすと、それを背に両手で剣を構えた。せめて、最後まで抵抗してやる。

 火球は連続で使用できないのか、魔物達はくちばしや爪で寄ってたかって攻撃してくる。私は剣をめったやたらに振り回してなんとか粘った。しかし、すぐに息は切れてきて、腕が持ち上がらなくなり、体重も支えられずに座り込む。
< 27 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop