魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そして、ついに枝にとまる火吐き燕たちの口が赤く光り始めた。火球発射の合図。
けれど体力を使い切った私はもうその場から動けない。

「はあ……悔しいなぁ」

 結局、最後に口にできたのはそんな一言だけだ。
 大事なものひとつ見つけられず、残ったのは後悔だけの人生だった。母の、温かく微笑む肖像画の顔が頭によぎる。

 物心ついてから私は一度だってうまく笑うことができていない。毎日疑問に思っていた、母はあんな人と結ばれたのに、どうしてあんなに綺麗に笑えていたんだろうと。私も生きていればいつかは、あんな素敵な笑顔を浮かべられるようになるのだろうかと、夢見ていた。

「ごめんなさい」

 誰に向けてか分からないが、我知らず私はそう呟いていた。悲しい涙が頬を伝う。
 燕たちのくちばしの奥がさらに赤く光り、ぼわっと火の玉が吐き出されるのを見て、私はぎゅっと目をつぶり――。

「…………助けて」
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