魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 テレサが私の背中をぐいぐいと押し、スレイバート様もやれやれと言った顔でシートへと歩いていく。一方ルシドだけは、遠慮がちに私たちの後ろに立ち尽くしている。馬車の中でもやはりスレイバート様とほとんど口を利いていなかったようだし、大丈夫か心配になってきた。

 しかしそんな時――。

「何やってんだ、とっとと来いよ。今さら俺らの身分に遠慮してるわけじゃねーだろ」
「は、はい……!」

 振り向いたスレイバート様がルシドに向けて顎をしゃくり、ふんと鼻を鳴らす。
 すると彼は、ほっとしたように表情を和らげその場からこちらに駆けてきた。あの時のことを気にする必要はないというスレイバート様の不器用な意思表示に、私は静かに口の中で笑ってしまった。

 その後は、テレサに場所を指定され、ふわっとした四角いシートの上に、私とスレイバート様、テレサとルシドが対面するような形で座る。すると目線が地面に近くなり、再会できた小さく健気な白い花に顔を近づけて挨拶した。

 ――結局、出会ってからを思い返してみても、私のスレイバート様に対する想いは変わっていない。それでも、彼がこれから幸せを掴んで欲しい大切な人だということは変わらないから、それでいいはず。
< 279 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop