魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 誰にも届かない願いをこぼす。ごうごうと燃え盛る炎に取り巻かれながら、生きたまま焼かれる恐怖にぎゅっと身が縮こまる。

 そこで、だった。

「――いい度胸だな、お前ら」
(ぇ…………?)

 火球は私の身体に届く前に凍り付き、澄んだ音を立てて砕け散る。

 突如吹き付けた凍てつく風がそれらを防いだのだと気付いた瞬間、私と魔物の前にひとつの人影が割り込んだ。

「たかが魔物風情が俺のものを奪おうなんて、とんだ身の程知らずだ」

 それは、背中に銀の長い髪を流したひとりの男性で――彼は刺々しい声で、魔物たちを(ただ)した後、こちらへゆっくりと振り向いた。

「――っ!」

 私はその顔にはっとする。なにせ、その横顔はとてつもなく美しかったからだ。
 切れ長の紫の瞳が嵌まった面差しはまるで神様ように精緻で、欠片の間違いも許さないような黄金比で構築されているように思える。
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