魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ほらほらお兄様も、何かありませんの!?」
「るせー、執務で疲れてんだから、ちったぁ休ませろっての。それからルシド――俺のなまった身体も大分元通りになってきたんだ。騎士団のやつらの相手もいいが、今度はこっちの稽古にでも付き合いやがれ」
「……! はい、ぜひ!」

 そうそう、この感じが……多分私たちの丁度いい距離感、そんな感じがする。テレサがたまに我がままを言って、スレイバート様がちょっと偉そうに振舞って、そして私たちも気が付いたことを自由に言えて……。

 それからも……まるでこの間の破綻の気配がなかったかのように、私たちは楽しい時を過ごす。過半数が魔法士のため話題がそちらに引かれることも多かったが……テレサがレース編み、ルシドが市場巡りを休日に嗜んでいることなど、彼らの新しい一面も知ることができた。
 お互いをよく知ろうとし、尊重し合うこと。きっとこれがクラウスさんの言っていた、人と距離を縮めるための努力なのだろう。

 その後、テレサは散歩に行くと立ち上がり、ルシドと共にどこかに消えてしまった。スレイバート様をひとりにしていくわけにもいかず、私はごろ寝している領主様の隣で、ぼんやりと心癒される景色を見つめる。

(あの白い雲、どこから流れて来たんだろう……)
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