魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 でも……そのままで本当にいいのだろうか。確かに、このボースウィン領の人々は、皆スレイバート様を慕い、温かい期待を寄せている。そのことが力にもなる一方で、今後もずっと本来の彼を縛り続け……誰でも内にあるような弱い部分を出せなくなってしまうならば。

(そんな辛い思い、この人にして欲しくないな……)

 私はここへ来て、窮屈だった自分を救ってもらったから……なにか彼を楽にしてあげられる言葉は無いのかと、懸命に口を動かし始めた。

「あの、私は、お母さんが凄かっただけで……最初だけ期待された後は、色んな人に見放されちゃって。だから周りからの重圧とかほとんどなくて、あなたとは全然違うんですけど……」
「…………」

 彼の視線がこちらに持ちあがり、私の喉はぐっと詰まった。口を閉ざしかけたが、かろうじて自分を叱咤し続きを話す。

「で、でも……自分と立場の境界線が分からないっていうのは、少しだけ理解できる気がして。私も自分の気持ちなんて、どうでもいいんだって思ってましたから」
「……ああ。それで?」
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