魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 だが、次いでゆっくりと明かされて行くもう片方の半身を見て私は二重の驚きを隠せなかった。
 なんと、その左半分は塗りつぶされたように黒く染まっているのだ。まるで、悪魔のように。

「どうした。助けてやったというのに礼もできねーのかよ? 俺の花嫁は」
「はな……よめ?」

 アンバランスな顔にやけに似合う皮肉気な表情で彼は私に笑いかけるとそう言う。その意味を測りかね、硬直したままの私を背に庇うと、彼は剣を抜きながらこう言い放った。

「まあいい。こっちは急いで来て疲れてんだ、とっとと片付ける」

 そうして彼は自由な片手に氷の槍を呼び出し、いくつもに分けて燕たちに飛ばした。それは一射も逸れず、瞬く間に魔物たちの数を減らしていく。

(わ、私……助かった、の?)

 信じられない思いで、男性の背中を凝視した私の胸は徐々に高鳴ってくる。
 遠くのものは魔法で射貫き、近づいてくれば見事な剣技で切り捨て、髪の先にすら触れさせない。
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