魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私の言葉尻を捕まえるように、彼の冗談気味の笑いが被さる。
 すると急に恥ずかしくなって、私の言葉は徐々に尻すぼみになってしまう。

「わ、私じゃなくてもいいんですよ全然! そのうち、恋人とか奥さんとか、仲のいいお友達だってたくさんできるでしょうし。でも……そういう人が、ひとりでも多くいたら、心が楽になるじゃないかって。すみません、なんだかまとまりがなくて」

 間近に近づく彼の圧に押されて、か細い声になってしまうが、なんとか自分の意見は言い終えた。だが、その反応はあまり芳しくはなかった。

「対等の関係で、誰かと心の底から求め合えることが、俺個人としての幸せになる、か……そうかもな。確かにそれが一番理想的な関係ってやつだろう。でもな……俺らはやっぱり、それぞれ、見えてるもんが違う。そんな相手がいたとして、どちらかの幸せを追求すると、どちらかが割をくっちまうとしたらどうだ? 仮に俺とお前がそうだったとしたら……お前は俺のために、今の幸せを全部捨てられんのかよ」
「…………」

 明らかな苛立ちを見せた彼の様子に、私は口を噤んでしまう。すると彼はバツが悪そうに会話を打ち切ろうとする。
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