魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「全隊、そのまま前進! ……停止の後、楯構えっ!」
「おうっ!」

 なるほど――戦いの訓練だからもっと荒々しいものを想像していたけれど、これだけひとりひとりの意識が高く統率が取れていると、どこか洗練された職人技のような美しさを感じてしまう。

 なにより、魔物や敵国との戦を想定して一糸乱れぬ彼らの必死さからは、この領地を守るのだという強い意志が感じられ、胸に迫るものがあった。

「頼もしいわ……まるで、ひとつの大きな生き物が戦っているみたい。何年も、血の滲むような訓練を続けてきたんでしょうね」
「それはもう。数十年以上在籍してこの地を守ってきた者もいますし、騎士達は、領民にとって信頼の象徴なんです!」

 テレサの言う通り、私達の周りではたくさんの民衆たちが、声援を送っている。その中でも特に目立つのが着飾った女性たちだ。熱心に訓練に取り組む騎士達に届けと黄色い声で叫んでいるのは、おそらく家族や恋人たちの名前だろう。

 そうこうしている内に隊列が陣形を変えてゆき、わっと歓声が強くなった。正方形の方陣から、三角形の楔形に、その端から小さなまとまりがひとつずつ全方位に散ってゆき、やがて中心の空いた、大きな円陣が組み上がる。
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