魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(まるで、ダンスみたい……)

 氷と炎の中で舞う男性の姿は、それはもう、綺麗で……。

 気付けば、数十以上もいた魔物の数は、半分以下に減っていた。こんな短時間で大勢の魔物を単独で打ち倒せる強力な魔法剣士なんて、聞いたこともない。頼もしく美しいその背中に魅了され、背中がぞくぞくしてくる。

「面倒くせえな。そろそろ、終わらせてやる……」

 魔物たちも彼を警戒して、近くに寄って来なくなった。その隙を見、男性は意識を集中し始める。今までにない大きな魔法の発動の気配がし、私は、髪が逆立つような気分に襲われた。

 戦いが終わる――。

 でも、そんな予感は、次の瞬間に崩れ去る。

「……っう! がはっ……!」

 急に男性が身体をくの字に折り、苦しみ始めた。彼は口を抑えたが、指の隙間から溢れた血が雪の上に落ち、点々と赤い染みを作る。
< 31 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop