魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 私は隣に出ると彼の腕を掴んで言い放った。

「どうして無視するんですか!」
「なにか用か?」

 冷徹ともとれる感情のない声で返され、背中がぞくっとする。だが、どうしても納得がいかない私は、足を止めようとしない彼に横合いから怒りを叩きつけた。

「あ、あそこまで痛めつける必要があったんですか!? たかが訓練試合でしょう?」

 汚れひとつないその姿から見ても彼とルシドの間にはずいぶんと力の隔たりがあった。あんな勝ち目のない相手をいたぶるようなことをしなくても、無難に試合を終わらせることはできたはずだ。

 なのに……彼は止まると髪をかき上げ、気だるげな低い声で失笑した。

「たかが……? じゃあなにか、あいつが怪我しないように手加減でもしてやりゃよかったか? 俺たちがやってるのはお遊びじゃないんだぜ」
「それは、そうなんでしょうけど……」
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