魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
でも彼は構わずに、私の手首を抑えつけて磔にすると、刃物のようにぎらついた目でこちらを覗き込んだ。
震えがくる。その心の内に閉じ込めた抑えようのない衝動が溢れ出し、私にも伝わってくるようで……。
(この人は……自分に憤っているの?)
途方もない怒りと……少しでも動けば、喉笛を食い破られてしまいそうな獰猛さを前に、私は身じろぎすらできない。それでも――同時に匂いとか、肌の滑らかさとか。私は彼の美しさを感じずにはいられなくて、頭が、くらくらしてきた。
「特別なんてのは、俺の親父やマルグリットみたいなのことを言うんだよ。誰にもできないことを成し遂げる天才。……そういう意味じゃお前もだな。ふ……どこの誰が、たった数ヶ月で蔓延る瘴気の源たる呪いを解き、この広大な領地を救える? んなことは、あのふたりにだってできなかった」
目を逸らしたくても逸らせない私の前で、だんだんと彼の顔は苦しそうに歪んでいった。
「俺はなにもできなかったんだ……傾いてくこの領地を前にな。すべてを、託されたってのに……。そんな出来損ないにも勝てないやつらが――どうしてこの先、守りたいものを守っていける……?」
その姿を目の当たりにした私は、悲しくて仕方がなかった。
震えがくる。その心の内に閉じ込めた抑えようのない衝動が溢れ出し、私にも伝わってくるようで……。
(この人は……自分に憤っているの?)
途方もない怒りと……少しでも動けば、喉笛を食い破られてしまいそうな獰猛さを前に、私は身じろぎすらできない。それでも――同時に匂いとか、肌の滑らかさとか。私は彼の美しさを感じずにはいられなくて、頭が、くらくらしてきた。
「特別なんてのは、俺の親父やマルグリットみたいなのことを言うんだよ。誰にもできないことを成し遂げる天才。……そういう意味じゃお前もだな。ふ……どこの誰が、たった数ヶ月で蔓延る瘴気の源たる呪いを解き、この広大な領地を救える? んなことは、あのふたりにだってできなかった」
目を逸らしたくても逸らせない私の前で、だんだんと彼の顔は苦しそうに歪んでいった。
「俺はなにもできなかったんだ……傾いてくこの領地を前にな。すべてを、託されたってのに……。そんな出来損ないにも勝てないやつらが――どうしてこの先、守りたいものを守っていける……?」
その姿を目の当たりにした私は、悲しくて仕方がなかった。