魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 どうして彼はこんなにも自分を卑下してしまうのか。筆舌に尽くしがたい苦しみに耐え、立派に跡を継いでこの土地の人々の期待を一身に背負っている。それだけで、誰とも比べようのない特別な功績のはずなのに……それだけでは、足りないのか。

「お前さ……無防備なんだよ」
「――――っ!」

 火傷したかのような熱さが肌に昇った。

 動きを封じ込まれた私の首筋に、彼の唇が触れたのだ。息だけの悲鳴が口から漏れ、あの、肌に直接触れられた夜のことが思い出される。

(なんで、こんなことするの……)

 ゆっくりとなぞるように、彼の唇がうなじから鎖骨の方へ這ってくる。
 羞恥に涙がじわりと浮かびつつも、どこか快感のような波が身体に押し寄せて、息が上がり、今考えていたことがすべて押し流されてしまう。

 そうして――しばらく首筋を啄んだスレイバート様は取っていた両手首を解放すると、ずるずると壁際で崩れ落ちてゆく私を見下ろした。
< 308 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop