魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「……くそっ、無理、しすぎたかよ……」
「だ、大丈夫ですか!」

 なにか病気でも患っているのか、膝をがくりと着く男性。そんな彼は駆け寄る私に口だけの笑みで答える。

「逃げろ……お前だけでも。助けが……近くに来てるんだ。なんとか、そこ、まで」
「そんなこと――!」

 ごほごほと咳き込む彼の背中をさすりながら、私は狼狽(うろた)えた。誰だか知らないけれど、こうして助けに来てくれた恩人をこのまま見捨てて逃げるなんてこと、できるはずない。

 そして――気付けば燕たちは、再度火球の一斉放射の体勢を整えている。すべての魔物の口がこちらに向く。

「――――!」

 私はぎゅっと目をつぶると、男性の身体を庇うように抱え込んだ。

「逃げろつってるだろうが――!」
「できません!」
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