魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「心配しないでください。なにを言われようと、僕のスレイバート様への信頼は変わりません。それに……当然なんだ。僕は確かに、現状に甘え忘れそうになっていた……この国に来る前、どんな思いで姉が、僕を逃がしてくれたのかを――」
「それは……」

 そういえば、彼がこちらに来る前、国を出ることになった詳しい経緯はついぞ聞けていない。

 幼いながら国を秘密裏に脱出しなければならないなんて、それは……彼がなにか今後の国の命運を握る重要な立ち位置にいた証ではないのか。

「もう一度、自分と向かい合ういい機会なのかもしれない――」

 ルシドは、膝の上で組んだ両手を握り合わせると、私に確かめた。

「聞いてもらってもいいでしょうか。シルウィー様には話しておきたいんです。僕が、どうしてこの国に来ることになったのか」
「ええ。私なんかでいいのなら」

 「それでは」という前置きの後。長い睫毛を伏せがちにしたルシドの口から語られ始めたのは……今からもう十年前も遡った、幼少時代の彼の古い記憶。
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