魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「だから……きっとスレイバート様が言われたことは正しい。僕が今、ここでこうしていられるのは、姉や今は亡きアルフリード様のお蔭なのに……。僕は周りの人の優しさに甘えて、楽をしようとしていたんです。もっと必死に、なりふり構わず強くなるための努力をしないといけなかった」

 ルシドは後悔するように、重ねた両手を砕けそうなくらい強く握る。でも……それは。

「それは……違うんじゃないかしら」
「えっ……」

 ぽつりと口から出た私の言葉に、ルシドが顔を上げる。
 なぜだか、今までを悔やんで否定するような彼の言葉を、私は認めたくないと感じてしまった。この国に来て、大切な人と出会い幸せを分かち合ってきたこと――それが間違っているはずがない。

 スレイバート様は、苦しみを忘れれば、人は弱くなってしまうと言っていた。けれど……そんな感情をずっと胸に抱えたまま戦っていられるほど人は強くない。
 忘れるべきじゃないのは、そこから自分たちを救ってくれた、周りの人たちが届けてくれた希望の方じゃないのだろうか。
< 316 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop