魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「確かに、その通りですね。すみません……あなたを困らせるつもりはなくて……。でも、こうしてあなたが僕の近くにいてくれることが、大きな力になっているんだとどうしても伝えたかった。さっきの気持ちは嘘じゃありませんから……もし、認めてもいいと思えたなら、いつでも言ってください」

 彼は、心の霧が晴れたような爽やかな微笑みを見せると、こちらのことを気遣ってか一旦席を立ち、御者台の方に向かう。
 その背中を見送り、私はひとりになった座席部分で、外を眺めながらなんとか落ち着きを取り戻す。

(はあ……びっくりした。別に変な意味じゃない……わよね?)

 一騎士として、あくまで職務上の責任を果たす――そういう意味に違いないとは思いつつも……真正面から男性に好意を伝えられるという貴重な経験に、中々窓に映る顔の赤みは収まってくれないのだった。



 こうしてシルウィー達がそれぞれの思惑を抱え、乗り越えようとしていた頃。
 ラッフェンハイム帝国の皇宮で動きがあった。

「ヴェロニカ、珍しいじゃないか。君の方からこちらを訪ねてくれるとは」
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